せとるこの日々

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髪を切る

仕事に復帰してからは、一番自然に見えるショートヘアのウィッグしか使っていない。
髪が伸び、カツラの下から横や後ろの地毛が出てきた。
前髪が伸びるまではカツラ生活をする予定なので、伸びた髪を切りたいと思った。
 
私は美容院で美容師さんと世間話をするのが苦手で、10年以上美容院には行っていない。
普段は自分で切っていた。
だが、くせ毛で短い後ろ髪を切ることは難しい。
もちろん行きつけの美容院というものがない。
初めて行く美容院で「抗がん剤で髪が抜けてー。」と説明するのも面倒臭い。
 
先日、術後1年検診で病院に行ったところ、病院の中に小さい美容院が出来ていた。
おお、ここなら抗がん剤で脱毛した人をカットしているだろうから、いちいち説明しなくてもいいかも。
で、そこの美容院に行った。
10何年かぶりの美容院だ。
 
横と後ろを切ることを確認した後、美容師さんはおでんの話を始めた。
ああ、苦手な世間話だ・・・。
慣れていない人と世間話をするのはとても苦手だ。
はじめ、私は相槌だけ打っていた。
 
だが、気が付くと、私や抗がん剤で髪が抜けた人の話になっていた。
やはり、そこの美容師さんは抗がん剤で脱毛した人の髪を何人もカットしてきたらしい。
 
「あなたの状態なら、春頃にはちょっと短いけどいい感じの前髪になってウィッグ取れるんじゃないかなあ。」
と、助言をしてくれた。
今の私には嬉しい言葉だった。
 
「またお願いしまーす。」
お店を出る私は笑顔で挨拶していった。
病院内美容院が単純な私の行きつけの美容院になった。