CVポートの埋め込みの時に主治医が助手の研修医に、
「普通の点滴とポートの点滴は針が違うんだよ。」
と説明していた。
「あ、僕、ケモ当番の時に覚えました。」
と助手は言っていた。
(そうか、化学療法室で点滴のルート確保している先生はケモ当番なんだ。)
私はまた新しい業界用語を覚えた。
ドセタキセル1回目、2回目は入院して点滴をしたが、3回目は化学療法室での点滴だった。
リクライニングシートに通された。
私の予想では、前回のように、スッと入ってスッと点滴が始まるハズだった。
「おはようございます。お願いします。」
ケモ当番の先生がやってきた。
若いから研修医なんだろうか。
CVポートの埋まっている上を消毒して針を刺した。
生理食塩水を繋げたが入っていかない。
「ちょっと抜いてやり直しますね。」
ケモ当番が言った。
(あれ?)
そして、消毒して針を刺して生理食塩水を繋げて入っていかないので抜く、という行為を2回繰り返した。
(あれ?あれ?あれ?)
「刺さってないんですかねえ。」
そう言いながら、4回目に看護師さんが針をギュッと押したら生理食塩水が入っていった。
「あー、よかったよかった。」
ケモ当番はホッとしたようで私の肩をポンポン叩いた。
(おーい、しっかりしろー、ケモ当番ー。)
心の中で言った。
この4月からケモ当番をやるようになったのだろうか。
少しすると少し離れたベッドの方から
「ちょっとやり直しますね。」
というさっきのケモ当番の声が聞こえた。
(がんばれケモ当番!)
心の中で私はエールを送った。