我が家の裏には5×7ｍくらいの裏庭がある。
じーちゃんは元気な時に、裏庭でささやかな家庭菜園をしていた。
トマト、ナス、キュウリ、ピーマン、シシトウ、ネギ、ヤングコーンなど、一緒にホームセンターに行って、じーちゃんの欲しい種を買ってきた。
じーちゃんの作った野菜を使って、私が料理をした。
だが11年前、じーちゃんが歩けなくなり、言動もおかしくなった。
病院で検査をしてアルツハイマー型認知症と診断された。
仕事と介護で家庭菜園は出来ない！と私は裏庭の野菜を全部抜いた。
その時は私の心も病んでいた。
半年くらいすると、薬が効いたのかじーちゃんが少し回復した。
じーちゃん一人で庭には出られなくなったが、一時期難しくなっていた意思の疎通が出来るようになった。
じーちゃんの少しの回復のおかげで私も少し落ち着いた。
裏庭は土だけの状態だった。
家庭菜園をする余裕は無かったので、芝桜を植えた。
説明書に書いてある通り、30から50センチ間隔で100ポット植えた。
『3から5年後には綺麗な芝桜のお庭が出来上がります。』
と、説明には書いてあった。
1年後、2年後、芝桜はいい感じに成長した。
このまま行ったら、あと1〜2年くらいで芝桜庭園になるかな？
じーちゃん喜ぶかな？
期待で胸を膨らませた。
しかしその後、芝桜は減っていった。
同じ時期に少し離れたところが空いていたので、そこに芝生を植えていた。
すると芝生はどんどん広がり芝桜を飲み込んでいった。
『芝桜は芝生に負けます。』
ネットで調べたらそう説明があった。
うーん、どうしようかな〜、と毎春考えている間に、私は乳がんになった。
裏庭の管理者は旦那になった。
旦那は芝生が伸びたらバリカンで刈って裏庭の手入れをちゃんとしてくれた。
だが、芝桜の救出は特にしなかった。
キレイな芝生の周りに自生の花が咲く。
水仙、アヤメ、すずらん、アジサイ、百合、その他名前を知らない花達が季節ごとに咲く。
手入れしなくても咲くので楽だ。
じーちゃんの調子がいい時は一緒に裏庭の花を鑑賞した。
芝桜庭園を見せることは出来なかった。
今、芝桜は初めに植えた時よりはるかに減っている。
だが、春になるとチラホラ咲いてくれる。
それはそれで味がある。
と勝手に思っている。
今年も芝桜がチラホラ咲く季節がやって来た。
