せとるこの日々

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ドセタキセル 1回目 阿鼻叫喚

病棟に行き、4人部屋に通された。
ポートを付ける気満々でいたところ、ベテラン風の看護師がやってきて私の右腕を持って見た。
「まだ取れると思うのよねー。」
そう言い、どこかへ行った。
数分後、戻ってきて言った。
「今日は点滴をやって、ポートは次回付けます。」
どうやら、主治医に確認しに行ったようだ。

一発で決めてくれるのなら、点滴でも問題はなかった。
さっきの女医さんとは違い、ベテラン風は私の腕をぐいぐい回す。血管が痛い。
嫌な予感がした。
針を刺した。
「あら、ここはコリコリしてるから駄目ねえ。」
ちょっと待て。
昨日の血液検査ではコリコリしているところは先に触って確認して避けてくれたぞ。
また一から何か所か刺して探すのなら止めてくれ。

「ここはどうかしら。」
ベテラン風は腕の真ん中あたりを触った
「その辺りはさっき3か所試して駄目でした。もう痛いから止めてください。ポートを入れるからポートが入ってからやってください。」
たまらず声を出した。
ベテラン風は返事をせず、違う場所に針を刺した。
「あら、駄目ねえ。」
「痛いから止めてください。やめて、やめてえええええ。」
私は叫んだ。
「ここで最後にするから。」
ベテラン風は嫌がる私をよそに手の甲に針を刺した。
そしてやっとルートが確保できた。
テープで針を固定してベテラン風は去って行った。
凌辱された私は放心状態だった。

点滴が終わるころ、若い看護師さんが来て言った。
「もし、点滴ができなかったら、調剤しちゃったからこの薬は廃棄処分になるところだったんです。」
聞くところによると、ドセタキセルは調剤したその日に使わなければパーになってしまうらしい。ネットでみたら10万円くらいするようだ。
私の治療用に調剤してあるので、「知らんがな」とは言えなかった。
「高い薬が無駄にならなくて良かったですね、ハハハ」
と、気の利いた返事もできなかった。
とにかく、血管が痛かった。それ以上に怖かった。

ああ怖かった。

ああ怖かった。

ああ怖かった。